[注:本記事はほぼ同内容のQiita記事のシャドーです]
東京都が開催したスタートアップイベント、UPGRADE with TOKYOの情報が入ってきましたので、急遽その結果に対する提言を述べる記事を書くことにしました。
東京都副知事の宮坂さんのツイートによると、Maplatと似た機能を提供している、Stroly社がこのイベントで優勝したそうです。
優勝はイラスト地図を素敵なモバイル体験地図に変えるStroly。都庁観光センターに実際にきていただいてそこにあるアナログのイラストマップを数えたら700種類もと。これをデジタル化し位置情報もついた状態でスマホでナビゲーションできるイラストマップを作れる技術の会社。https://t.co/XeTsv58ukR
— 宮坂学 Manabu Miyasaka (@miyasaka) December 21, 2019
ツイートの内容を見ると、都庁観光センターにある700種類のイラストマップを、今後デジタル化し位置情報もついた状態でスマホでナビゲーションできるシステムを、競争入札あるいは随意契約でStroly社に依頼する可能性もあるというふうに受け取れます。
が、ここで情報提供しておくべきなのは*1、Strolyはこのようなシステムを作り得る世の中で唯一の技術ではなく、おなじこと、いやそれ以上ができるオープンソース技術が、Maplatとして、世の中に存在するということです。
対抗技術がオープンソースで存在する以上、行政は随意契約など行うべきではなく、競争入札を行うべき案件であろうということになります。
行政なればこそ、Stroly社サーバ上でしか動かない技術ではなく、本来はオープン技術を使うべきであろうと思いますので、随意契約など論外であろうと思います。
そしてMaplatには、Strolyを上回るいくつもの性能、機能上の特徴があります。
その辺を網羅した最新の機能対応表は下記の通りになりますが*2、
このいくつかについて、行政システムに対応する際の利点、問題点なども交えて説明を加えますと、
- MaplatはStroly技術と違い、古地図/絵地図上の点と正確な位置座標が必ず1対1で対応する事を保証することができるので*3、人命危険性のない観光、エンタメ用途のみならず、防災など人命がかかるような用途にも使っていただける技術です。
Strolyは正しい場所に位置が表示される保証がないため、人命がかかった災害用途など(例:ハザードマップ)に使うことは困難です。 - Stroly技術と違い、Maplatは古地図/絵地図上の線と、正確な地図上の線(たとえば道路、線路形状など)の形が異なっても、双方の対応点が必ず線の上に乗るように変換させることができます。
なので、抽象的に描かれたバス路線図、鉄道路線図上に車両の位置を表示したりといった用途にも利用できます。 - Stroly社のサーバの上でしか動作せず、継続して公開しようと思えばサービスの継続フィーをStroly社に払い続ける必要のあるStrolyと違い、Maplatは東京都様のサイトの上でも、サーバサイドの開発の必要なくWebサーバに静的ファイルを配置するだけで動きます。
サーバサイドがないので、都のWebサーバが落ちない限り障害が発生することもありません。 - Stroly社のサーバの上でしか動作しない、すなわちインターネットに繋がった環境でしか動作しないStrolyと違い、オフラインでも動作可能なMaplatは、たとえばネットにつながらないスタンドアローンな公共博物館内でのシステムなどでも、館内システム開発の部品としてご利用いただけます。
- 決まった動作の地図サイトしか提供できないStrolyと違い、Maplatは動作を外部からAPIで制御できるので、先にも書いたようなバス路線図、鉄道路線図上にリアルタイムな車両の位置をAPIで制御し表示したりと言ったことにも利用可能です。
Stroly社も、特別に機能追加を依頼すれば作り込みでできるかもしれませんが、公開されたAPIをStrolyは持たないため、その作り込みができるのはStroly社のみになりますが、Maplatはオープンソースですので、どちらの業者様でも使い方さえ覚えれば競争入札に参加できることになります。 - スマホのネイティブアプリの部品として組み込めるようなネイティブSDKライブラリも用意しておりますので、観光アプリなどの中でも部品として使うことができます。
Stroly社もスマホアプリを作ることはできますが、SDKがないため、古地図絵地図表示に関係ない部分含めて随意契約でStroly社に発注して作らせることしかできません。
MaplatはオープンソースでネイティブSDKライブラリを用意していますので、どんな会社でも使い方さえ覚えれば作れるので競争入札させることができます。
といった特徴があります。
単に誰でもアクセスできるオープンソース技術があるだけでなく、これだけ
- ハザードマップにも対応できない
- バス鉄道路線図にも対応できない
- オフラインの公共施設内案件にも対応できない
- API経由のバックエンド連携もできない
- スマホネイティブアプリなどの開発にも使えない
- プロプライエタリ
とこれだけ悪条件が重なっている以上、Strolyが随意契約になどなり得る根拠などありません。
むしろ、前の3条件は性能や動作原理に関わるものである以上、追加開発でなんとかできる類のものではないので、逆にこれらが競争入札の発注仕様に入っていると、Strolyの方が競争入札に参加できないような類のものです。
逆に残念ながら、StrolyにあってMaplatにないものもあります。
それは、ユーザが無料でオンラインで地図を編集し、発行できるオンライン地図エディタです。
これは残念ながら、開発工数およびシステム運用含め、技術力の深さよりマンパワーで解決される類のものなので、多大な資金を持って人を集めているStrolyに比べ、オープンソース活動でしかないMaplatはこれを準備できていません。
しかしながら、お金のない一般個人を相手にするB2C案件では、無料オンライン地図エディタの存在は大きいですが、行政から請け負うようなB2B案件では、無料オンライン地図エディタの存在はほとんど意味がありません。
たとえば都の案件でも、700枚の地図のマッピング作業を、お客様側である都の職員が、自らエディタを使ってデータ編集し、サイトの運営だけStrolyに任せるでしょうか?
そうではなく、700枚の地図のマッピング作業まで含めて、発注仕様に含めるでしょうし、そうなると無料オンライン地図エディタの存在は特に意味がありません。
もちろん、基本データの作成は発注するものの、微修正は都の職員がやりたい、という要件も出てくるでしょう。
が、これも、Maplatはオンラインエディタはないもののオフラインエディタはちゃんとあるので、これも都の職員にオフラインエディタで編集してもらって、データだけ納入してもらうという形で、即時性にさえ目をつぶれば運用でカバーできるものです。
あるいは、性能が足りていないのではなく機能が足りていないだけなので、この案件のためだけに必要十分最低限のオンラインエディタを追加開発するというのもアリでしょう。
いずれにしましても、Strolyがオンラインエディタを持っていることで、お客さんがコンテンツを少し改変できる自由度で多少優位なのは事実ですが、しかしながらもっと広い意味の自由度では、Strolyサーバの上でしか動かないStrolyサービスと違い、全てをお客さんのサーバの上で動作させられる(全てのコンテンツをお客さんが持っている)Maplatの方が、はるかに自由度が高いのも事実です。
今回、Strolyがこのイベントで1位を取り、宮坂副知事が言及したことで、700枚もの地図を扱うシステムを都が開発する可能性が見えて参りましたが、
- 一般庶民の都民としては、このシステムが随意契約で劣った技術と高価なフィーの会社に案件がわたり、税金が無駄にされることのないよう監視していく必要
- 公共団体向け受注を生業とされる企業様においては、この大きなシステムの競争入札が出てくることに備え、Maplatを勉強し、対応できる提案を磨いておく必要
があるのではないでしょうか。
*1:というか、既に宮坂副知事にもUPGRADE with TOKYO運営事務局にも情報提供済みですが。
*2:表のオリジナル含め、Maplatの基本的な機能はこちらのリンクで見ていただくことができます。>> http://bit.ly/maplat_flyer
*3:専門用語で「同相変換」というものを保証できます。Strolyはその保証ができず、双方向に変換した際に元の場所に戻ってくる保証がありません。